2009年2月18日水曜日

姜尚中東大大学院教授の話を聞く

 一昨日(平成21年2月16日)、東京の帝国ホテルで姜尚中東京大学大学院教授の講演を聞いた。タイトルは「悩む力」についてである。存知の通り、彼の著『悩む力』(集英社新書)はミリオンセラーだという。その著を廻る解析がその講演の主旨である。
 プロローグはなぜ、『悩む力』が売れているのかという分析から始まった。その語り口はソフト。人を引き込む魅力がある。結論から言うと、現代は鬱の時代であり悩む時代であるから読者の関心を引いたということである。どんなに高邁な哲学を持っていたとしてもドロドロとした現実社会で生きていかねばならない。そのギャップこそ悩みの源泉だ。
 姜は、近代の傑出した日本人の思想家として福沢諭吉と夏目漱石の二人を挙げる。躁の時代には福沢諭吉。鬱の時代には夏目漱石。そして、夏目漱石と同時代人である社会学者マックス・ウェーバーとの共通性を列挙し、病の現代を乗り越える方途を示した。それこそ、心理学者であるヴィクトール・フランクルの「意味への意志」である。「生きる意味」が悩みを乗り越えるためには必要であると彼は述べる。非常に示唆に富んだ講演であった。

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