一昨日(平成21年2月17日)、某銀行主催の講演会に出席した。講師は山口義行立教大学教授である。タイトルは「日本の景気動向と中小企業経営~いま、経営者は何をなすべきか」。話術は『聞かせる技術』(河出書房新社)の著者だけあって見事である。論理明快にして起承転結はさすがである。
ところで、話の主旨は、中小企業経営者は時代のトレンドとその真実を読みとらなければならないということである。マスメディアや親企業の言説に騙されるな。特に、経済番組などはコメンテーターに証券や投資銀行のアナリストが登場している。今回の状況を作り上げたいわば戦犯がである。信用などできない。というのが山口教授の論理である。確かにその通りである。だが、我々素人が真実を知ることなどできるのであろうか。難しいというのが現状である。まあ、そのために勉強しろということなのであろうか。
そして、この時代を生き抜くためのキーワードは何か。①守る②つなぐ③問うの三つであるという。新たな中小企業の連携の中で学び新事業を創出する。生成躍動とした組織の構築を目指さなければならないと自覚した一日となった。
2009年2月19日木曜日
2009年2月18日水曜日
姜尚中東大大学院教授の話を聞く
一昨日(平成21年2月16日)、東京の帝国ホテルで姜尚中東京大学大学院教授の講演を聞いた。タイトルは「悩む力」についてである。存知の通り、彼の著『悩む力』(集英社新書)はミリオンセラーだという。その著を廻る解析がその講演の主旨である。
プロローグはなぜ、『悩む力』が売れているのかという分析から始まった。その語り口はソフト。人を引き込む魅力がある。結論から言うと、現代は鬱の時代であり悩む時代であるから読者の関心を引いたということである。どんなに高邁な哲学を持っていたとしてもドロドロとした現実社会で生きていかねばならない。そのギャップこそ悩みの源泉だ。
姜は、近代の傑出した日本人の思想家として福沢諭吉と夏目漱石の二人を挙げる。躁の時代には福沢諭吉。鬱の時代には夏目漱石。そして、夏目漱石と同時代人である社会学者マックス・ウェーバーとの共通性を列挙し、病の現代を乗り越える方途を示した。それこそ、心理学者であるヴィクトール・フランクルの「意味への意志」である。「生きる意味」が悩みを乗り越えるためには必要であると彼は述べる。非常に示唆に富んだ講演であった。
プロローグはなぜ、『悩む力』が売れているのかという分析から始まった。その語り口はソフト。人を引き込む魅力がある。結論から言うと、現代は鬱の時代であり悩む時代であるから読者の関心を引いたということである。どんなに高邁な哲学を持っていたとしてもドロドロとした現実社会で生きていかねばならない。そのギャップこそ悩みの源泉だ。
姜は、近代の傑出した日本人の思想家として福沢諭吉と夏目漱石の二人を挙げる。躁の時代には福沢諭吉。鬱の時代には夏目漱石。そして、夏目漱石と同時代人である社会学者マックス・ウェーバーとの共通性を列挙し、病の現代を乗り越える方途を示した。それこそ、心理学者であるヴィクトール・フランクルの「意味への意志」である。「生きる意味」が悩みを乗り越えるためには必要であると彼は述べる。非常に示唆に富んだ講演であった。
2009年1月30日金曜日
東京財団、渡辺恒雄氏の話を聞く
昨日(平成21年1月29日)、神戸の某ホテルにて、東京財団研究員渡部恒雄氏の講演を聞いた。読売新聞社の「ナベツネ」ではない。タイトルは「米国はどこにむかうのか?」真に時宜を得た内容である。渡部氏は、東北大学歯学部を出たあと渡米。ニューヨークの大学院で政治学を学び、その後は戦略国際問題研究所(CSIS)にて10年余りの研究生活を送ったという。
話は論理明快にして弁舌爽やか。父堂は衆議院議員の渡部恒三。福島弁の朴訥なるその人とは大いに異なる。それはともかく、戦略国際問題研究所の10年のキャリアは多くのの知識と人脈を築き上げているいるようだ。彼の口から飛び出す名は現オバマ政権の中枢を担う人々である。特に、今後の日米関係についての言及は興味深いものがあった。メディアではオバマ政権では日米よりも米中関係が重視されるという論調が主流であった。これはいみじくも前民主党政権であるクリントン時代のジャパンパッシングからの類推であろうか。
渡部氏は語る。今回の政権には知日派、親日派が多く日米重視の象徴となっていると。例えば、ガイトナー財務長官。彼はエール大学日本学部の出身。駐日米大使館での勤務もあるという日本語堪能のエリート。退役軍人長官のエリック・シンセキは日系三世。日系として二人目の閣僚である。またアジア担当国防次官補のグレグソンは元沖縄駐留。彼の人格は沖縄ではつとに有名である。
これらの人事は日本にとっては有利というものではないが、若干の望みは持てるかも知れない。それより、世界同時不況の原因であるアメリカの経済の復興こそ緊急の課題である。オバマさん頑張ってとエールを送りたい。
話は論理明快にして弁舌爽やか。父堂は衆議院議員の渡部恒三。福島弁の朴訥なるその人とは大いに異なる。それはともかく、戦略国際問題研究所の10年のキャリアは多くのの知識と人脈を築き上げているいるようだ。彼の口から飛び出す名は現オバマ政権の中枢を担う人々である。特に、今後の日米関係についての言及は興味深いものがあった。メディアではオバマ政権では日米よりも米中関係が重視されるという論調が主流であった。これはいみじくも前民主党政権であるクリントン時代のジャパンパッシングからの類推であろうか。
渡部氏は語る。今回の政権には知日派、親日派が多く日米重視の象徴となっていると。例えば、ガイトナー財務長官。彼はエール大学日本学部の出身。駐日米大使館での勤務もあるという日本語堪能のエリート。退役軍人長官のエリック・シンセキは日系三世。日系として二人目の閣僚である。またアジア担当国防次官補のグレグソンは元沖縄駐留。彼の人格は沖縄ではつとに有名である。
これらの人事は日本にとっては有利というものではないが、若干の望みは持てるかも知れない。それより、世界同時不況の原因であるアメリカの経済の復興こそ緊急の課題である。オバマさん頑張ってとエールを送りたい。
2009年1月29日木曜日
長田貴仁著『増補新版パナソニックウェイ』を読む
本書『パナソニックウェイ』(プレジデント社刊)は神戸大学大学院准教授長田貴仁による長年のフィールドワークによって構成された好著である。確かに、著者が後述するように「学術書の割には、読み易かったですね。」というパナソニックの部長が評価する如く、経済誌を読むような気楽さがある。当然、彼が経済誌の記者であったことが大きく影響しているのには違いない。インタビューも多く、かなりの臨場感がある。
例えば、大坪社長の次のような回答。「松下電器の裏の競争力は何ですか?」という質問に対して。「5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)が職場で基本的価値観としてしっかり認識されていることが重要です。これは、工場であろうが、間接部門であろうが同じだと思います。」机上の空論ではなく現場をよく知悉した発言である。人間の姿勢はすべて行動に表出するのである。自らの反省として心に刻み込まねばと思う。
ただ、本書の欠点が一つ。著者がパナソニックに対して「ブランドの統一とそのブランドを社名にすべきだ。」と提案したのが自分の成果であると自画自賛するところがまさしく学者らしくない。嫌な部分の記者精神というか、コンサルタント根性なのかと思ってしまう。
例えば、大坪社長の次のような回答。「松下電器の裏の競争力は何ですか?」という質問に対して。「5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)が職場で基本的価値観としてしっかり認識されていることが重要です。これは、工場であろうが、間接部門であろうが同じだと思います。」机上の空論ではなく現場をよく知悉した発言である。人間の姿勢はすべて行動に表出するのである。自らの反省として心に刻み込まねばと思う。
ただ、本書の欠点が一つ。著者がパナソニックに対して「ブランドの統一とそのブランドを社名にすべきだ。」と提案したのが自分の成果であると自画自賛するところがまさしく学者らしくない。嫌な部分の記者精神というか、コンサルタント根性なのかと思ってしまう。
2009年1月28日水曜日
甲南大学杉本直己教授の話を聞く
昨夜(平成21年1月27日)、甲南大学先端生命工学研究所の杉本直己所長の講演を聞いた。講演と言っても、視聴者15名の研究会の席である。タイトルは「ナノバイオと未来生活」。ワトソンとクリックによるDNAの二重螺旋の発見(1953年4月25日のNature誌)から現在の遺伝子工学、ナノバイオに至るまでを簡潔に説明して頂いた。人間とチンパンジーのDNAにおける塩基(A,T,G,C)の配列の相違は1.数%であるとは驚きである。また、白鶴酒造やパナソニックとの産学連携の例示も発想の転換というところで大きな感銘をした。
それにしても、杉本教授のディベート力は素晴らしい。理系の学者とは思えないほどである(僕の少ない経験から判断すると)。アメリカでの学究生活の成果ということであろうか、それとも遺伝子の配列なのか。門外漢の僕が、同研究所の実力を知ったのは昨夜が初めてであった。今後、DNAによる検査装置やコンピューターなどができる日が遠からずやってくるかも知れない。教授は1989年のアメリカ映画「Field of Dreams」の例を挙げ話を締めくくった。まさしく、夢の実現は間近との予感を感じさせる話であった。
それにしても、杉本教授のディベート力は素晴らしい。理系の学者とは思えないほどである(僕の少ない経験から判断すると)。アメリカでの学究生活の成果ということであろうか、それとも遺伝子の配列なのか。門外漢の僕が、同研究所の実力を知ったのは昨夜が初めてであった。今後、DNAによる検査装置やコンピューターなどができる日が遠からずやってくるかも知れない。教授は1989年のアメリカ映画「Field of Dreams」の例を挙げ話を締めくくった。まさしく、夢の実現は間近との予感を感じさせる話であった。
2009年1月27日火曜日
『ビジネス三國志』を読む
本書『ビジネス三國志』(プレジデント社刊)は、石井淳蔵流通科学大学学長の実質的編書である。内容は石井の前任校である神戸大学の教え子たちの論文が6本掲載されている。石井淳蔵は言わずと知られた「ブランド論」の大家である。昨年出版された『マーケティング優良企業の条件』(日本経済新聞社出版社刊)では、積水ハウス、カルビー、松下電器産業(水越康介との共著)、終章を執筆。一社についてのフィールドワークによる研究が主体であった。それに対して、今回の本書では製品、商品の観点から「三國志」と銘打ち、ライバル企業との関係性からブランド論を展開しているのである。
「市場とは一つではない」とし、「ライバル各社の競争の中で新たに生まれてくる場の形成のダイナミズムの意義を強調したい」(P41)と記している。その観点から、プレミアムビール、ハンバーガー、モバイルPC,健康緑茶等を題材に論理を展開しているのである。ただ、そのターゲットへの研究が皮相的である点が少々気になる。徹底した取材がなされたというよりメディアの取材を援用しているのが多いようである。従って、水越康介首都大学東京准教授がネスレやパナソニックを深く研究した前著に比較して本書の浅薄さが目立つのはそのせいかもしれない。
「市場とは一つではない」とし、「ライバル各社の競争の中で新たに生まれてくる場の形成のダイナミズムの意義を強調したい」(P41)と記している。その観点から、プレミアムビール、ハンバーガー、モバイルPC,健康緑茶等を題材に論理を展開しているのである。ただ、そのターゲットへの研究が皮相的である点が少々気になる。徹底した取材がなされたというよりメディアの取材を援用しているのが多いようである。従って、水越康介首都大学東京准教授がネスレやパナソニックを深く研究した前著に比較して本書の浅薄さが目立つのはそのせいかもしれない。
2009年1月26日月曜日
西成活裕著『無駄学』を読む
本書『無駄学』(新潮選書)は西成活裕東京大学准教授の二冊目の著書である。一冊目は『渋滞学』(新潮選書)。彼の専門領域である。渋滞のメカニズムを説いたこの処女作は以前かなり興味深く読んだ。渋滞学という呼称は西成が創発したものであるが、無駄学の呼称も同様とのこと。「ムダ取り」で知られるコンサルタント山田日登志との出会いから無駄学という学問は始まったという。山田はトヨタ式経営手法である「ムダ取り」を、多くの企業で指導しその評価はかなり高い。メディアでも多く取り上げられ、そのスピード感と強烈な個性は印象的でもある。西成は山田との同行を通じ、山田の手法に西成の「渋滞学」が適応できると考えたようである。どちらかというと、山田の手法は暗黙知に近い部分が多いようである。その暗黙知を知として形式化しようとするのが西成の「無駄学」と言えよう。著者も言うようにその目的の達成は道半ばであろうが面白い試みであることは論をまたない。
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