2009年1月27日火曜日

『ビジネス三國志』を読む

 本書『ビジネス三國志』(プレジデント社刊)は、石井淳蔵流通科学大学学長の実質的編書である。内容は石井の前任校である神戸大学の教え子たちの論文が6本掲載されている。石井淳蔵は言わずと知られた「ブランド論」の大家である。昨年出版された『マーケティング優良企業の条件』(日本経済新聞社出版社刊)では、積水ハウス、カルビー、松下電器産業(水越康介との共著)、終章を執筆。一社についてのフィールドワークによる研究が主体であった。それに対して、今回の本書では製品、商品の観点から「三國志」と銘打ち、ライバル企業との関係性からブランド論を展開しているのである。
 「市場とは一つではない」とし、「ライバル各社の競争の中で新たに生まれてくる場の形成のダイナミズムの意義を強調したい」(P41)と記している。その観点から、プレミアムビール、ハンバーガー、モバイルPC,健康緑茶等を題材に論理を展開しているのである。ただ、そのターゲットへの研究が皮相的である点が少々気になる。徹底した取材がなされたというよりメディアの取材を援用しているのが多いようである。従って、水越康介首都大学東京准教授がネスレやパナソニックを深く研究した前著に比較して本書の浅薄さが目立つのはそのせいかもしれない。

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