本書『神仏たちの秘密ー日本の面影の源流を解く』(春秋社刊)は松岡正剛の連塾での講演集。三部作の第一巻である。実を言うと、松岡正剛の著作を読んだのは初めてである。その名は知ったのは三十年も前のこと。なぜ、今なのか?彼をあまり知るべき位置にいなかったからである。正剛という名も中野正剛を想起させ感情的に忌避していたのかも知れない。
今回は、この本題に惹かれての読書となった。講演集だけあって実に読みやすい。一気に読破することとなった。とは言え、アンダーラインを引くこと35か所。その発想の面白さはまさしく衝撃であった。「てりむくり」やサザンオールスターズの歌詞を例として日本人の心層を読み解くなど斬新である。
ただ、何点かが理解不能である。ひとつは朝鮮半島と日本列島との関係である。どうやら、多くの歴史学者たちとと同様に、古代の関係を現在の国家を前提にして考えているようである。朝鮮半島半の国家と日本の国家は明確に異なるという発想である。しかし、古代人はどれほど強固な国家領域の意識を持っていたのであろうか。日本海(日本側の呼称)という海が発想の壁にになっているのかも知れない。日本列島にも朝鮮半島の一部にも倭人はいた。自由に往来するのは当然。文化も同一。僕はそう思うのである。
もうひとつは縄文人と弥生人との関係である。松岡は縄文人は山人となったと考えているようである。しかし、現在では遺伝子研究などの科学的分析から現代日本人に縄文的形質と弥生的形質が残存していることが分かっている。決して、縄文人が放擲されたのではなく、松岡流に言えば、縄魂弥才が古代にあったのではなかろうか。
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