2009年1月10日土曜日

堀紘一著『世界連鎖恐慌の犯人』を読む

 本書『世界連鎖恐慌の犯人』(PHP)は、時宜を得た著である。堀紘一の論理は明解である。「金融資本主義から産業資本主義への回帰、「虚」の経済から「実」の経済への再転換」(本書39P)こそ本書の主張であるからだ。学者の文章にはない、短いセンテンスは解りやすい。ちょっとしたノウハウ本として読むのには最適かも知れない。
 ただ、難点は堀紘一氏のエリート意識である。東大卒やハーバードMBAが数度出てくるのには厭味を感じる。更に、読み続けていくうちに投資ファンドとの個人的な体験が出てきた。その段階で本書の奥底に怨みの感情が渦巻いているのを知り興ざめしてしまった。
 昨日、京都で伊藤元重東大大学院教授の講演を聞いた。この金融危機の分析については堀氏と同様ではあったが、今回の経済危機を金融危機だけではなく構造の変化から捉えていた点が相違する。ひとつは高齢化の問題、もうひとつは技術革新の側面である。彼は言う。今まで続いた円安が国内回帰を促したが、円高状況では更なるグローバル化が必要であると。まさしくその通りである。ただ、彼の持論である消費税の大幅アップ(20%)や相続税の課税下限の引き下げについては、論理的には首肯できるものの十分な説明が必要であると思う。だが、彼の視点はかなり独創的であるものの、正鵠を得ているのではなかろうか。
 

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